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1970 バングラディシュに生まれる
ロンドン在住
ルナ・イスラム展  虚構と現実めぐる視線
三田晴夫 (さんだ・はるお 毎日新聞学芸部)
 絵画がそうであるように、映像においても形式と内容のかませ具合が表現のカギとなるだろう。とりわけ時間に多くを負っている映像では、このバランスが極端にこわれてしまうと、表現が流れていかなくなるからだ。初見参のバングラデシュ出身で、ロンドンに住む女性映像作家ルナ・イスラムは、この手綱さばきが実にうまい。
 「比率」と題した16分の作品は、壁面と手前につるした大小2枚のスクリーンにまたがって進行してゆく。手前の小画面に英国の古びた駐車場ビルの屋上、背後の大画面には、その屋上にあるレストランの対照的に新しい内部の情景が写される。客が訪れ、ウエーターが料理を運ぶだけで格別の物語もない。同様にもう一つの画面も、がら空きの駐車場や屋上の模様をたんたんとなぞるだけ。
 ところが作品の中途で、日常の実景と思えた映像が、虚構化された場面に過ぎなかったことが種明かしされる。見てのお楽しみだが、ここから映像は建物に訪れた宿命が、登場人物に扮した現地の人々の人生にも、波紋を投げかけた物語の叙述へと転じるのである。同時に、二通りの画面をシンクロさせた方法も、内容にかかわる必然だったことが納得されるだろう。見終わった後も、夢の中の現実にいるような不条理感が尾を引く作品だ。70年生まれ。
初出:毎日新聞 文化欄 2004年2月23日号夕刊掲載より抜粋
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